早見裕司『メイド刑事』

積み本消化中。とりあえず読了。感想。

「お気をつけ下さいまし。密売物のトカレフは、できが悪うございます。暴発で、みなさまのお手を吹っ飛ばしかねません」
小柄な、きゃしゃとも見える少女からそのセリフがでた次の瞬間、侵入した3人の賊は急所を一撃され、地面に転がっていた。その場に立っていたのはただ1人、警察庁長官・海堂俊昭邸付のメイド、若槻葵17歳。普段は国家特種メイドとして海堂邸で働いているおとなしい少女だが、メガネの奥に隠された正義の魂が燃え上がるとき、重合金製のクイックルワイパーがうなりをあげる。
「悪党ども、冥土が待ってるぜ!」

こう云った発想は稀に見かけるけど、これは本格的なものでした。以前どこかで見かけた"メイドが刑事なラノベ"はいかにもドジっ娘っぽく一部の層を狙った外見重視的なものだったのですが、この話はその捩れた思想を覆すようなストーリー展開を見せ付けてくれ、大変読み応えのあるものでした。
世界観と、いうのですか。始めに注意書きが施されてあったように特殊な設定が目を引きますね。メイドが正式な職種として世間に広まってるのとか。しかし、見知らぬ固有名詞用語が非常に多くいちいち解説する文章が著しく見受けられており、理解を諦めてしまこともしばしばあるのが難点だったり。
メイドさんが反則なまでに強いです。冒頭から殺気を感じ取るようなメイドで驚愕しました。かと言って戦闘主体といったメイドではなく、何から何までこなす完璧なメイドですがね。この設定によって読者層が大きく変わってくると思われ。

『この先、冥途』
「こ、これはメイドの一里塚!」

と、いうようなシーンがあったので一応言及。悪を懲らしめるなど、そう云った話によく見られる決め台詞のようなものですかね。陰マモがいい例でしょうか(未読)。どこに隠し持っていたとか、そんな無粋な疑問が生まれてしまうようなものですが、これはこれで気に入っていたり。しかし、パターン化されると面白みがなくなってしまうのが難点。
このラノベの見所は、一流のメイドである主人公・葵の仕事振りと、燃えるエキサイティングな展開ですね。全く萌え要素はないといっても過言ではありません。たまにはぬるま湯に浸かってみるのも悪くないです。
ちと気になった所を列挙。まず小道具の使用法や魅せ方ですかね。皆が皆で単純に武器を扱っているのが腑に落ちないです。またネタに古臭いものが漂ってたりすることも。中森明菜を始めとする著者の趣味があらぬ所へ㌧でいるのが微妙。そして上記にもあるようにパターン化された展開が読書意欲を殺ぎとってしまいます。圧倒的に強いメイドが事件を解決のワンパターンなものですしね。オタネタ導入は如何なものかと思う。そもそもメイドに固執する必要はないのにな。
雑感。購入後に気付いたのですがイラスト担当が灰村キヨタカ先生の名前が平仮名表記だったのですが。表記に何か特別な拘りがあるのかは知らないですけどいいのかな。いや、駄目だろ。確認URL禁書目録メイド刑事
点数付け。100点満点中、80点程。安定した作品なのだけどもう少し弾けてもいいのではないかと。